都教委は、不登校経験者らを受け入れるチャレンジスクールの定員を増やすなどで受け皿を充実させると述べていますが、受け皿としてそれでは不十分。夜間定時制は不登校経験者らの居場所であり、少人数で一人一人に合わせた支援ができる重要な役割を持っています。困難を抱える生徒の受入環境の充実を言うなら、本来は夜間定時制こそ充実させるべきではないでしょうか。
70年代の苦学生や集団就職者、80年代の中退者や暴走族、90年代の不登校経験者、そして障害者、外国籍の子どもたち。その折々に「困難を抱えた生徒」が入学してきたのが定時制高校です。学習障害、ミックスルーツ、高齢者……ドラマの科学部の生徒たちは、現在の定時制高校に通う生徒の代表例に近い属性を持っていることにも、作品に対してリアリティと誠実さを感じました。年齢も思考もバラバラですが、「学ぶ」意欲でつながり、最も多様性のある学びの場で豊かな関係値を築いていくのが本作です。
さらに、ドラマでは科学部以外の生徒にもちゃんとクローズアップされていました。キャバ嬢として働きながら定時制に通うシングルマザーの庄司麻衣(紺野彩夏)のような生徒もいれば、オーバードーズやリストカットを繰り返す松谷真耶(菊地姫奈)のような生徒も登場します。
近年、メンタルヘルスの問題に苦しむ生徒も多いのは事実。命に関わることが、学校で本当に起こり得るからこそ、教員は生徒が何らかの課題を抱えていることを前提に向き合っていかなければいけません。本作では養護教諭・佐久間理央(木村文乃)が生徒の命を最優先に考えた対応を心がけていることにも、観ていて安心感がありました。
最終回のみどころは
第一話で藤竹は「ここはあきらめていたものを取り戻す場所なんですよ」と話していました。年齢に関係なく、誰もが学ぶ意思があれば、いつだって学ぶことができる。定時制高校を舞台にそのことを改めて伝えるというのは、とても意義があることだと感じます。