1ページ目から読む
2/2ページ目
なぜ射精できない?
性機能を温存するためにHIFUを選んだので、精液は作られているし、精嚢に溜められてもいる。もちろん勃起もするが、射精はしない。
どうなっているのかと言えば、精嚢から出た精液は、本来射精管から尿道を通って陰茎の先から飛び出すのだが、HIFUで焼灼したことで射精管と尿道の合流部の構造が変化し、精液は尿道を逆流して膀胱に流れ込むようになったのだ。
これを「逆行性射精」という。前立腺の手術や今回のHIFUのような治療によって、射精時には閉じているはずの膀胱頸部が開きっぱなしになることで起きる現象だ。それでも射精時の快感はあるし、いまさら子どもをつくるつもりのない僕には却って便利だったりもするのだが、やはり衝撃的だった。もちろん、精子そのものに影響はない。この状態で子どもを作りたい場合は、精巣から精子を取り出して人工授精することは可能だ。
精液が外に出てこないだけで快感があるなら女性との性交渉も可能なのだが、実際にこの状況をわが身に受けると、そんな気分は失せてしまう。いちいちそんな説明をして、同意を得てからコトに及ぶのも面倒だし、相手の女性に逆行性射精という現象に興味を持たれても恥ずかしい。せっかく無理を言ってHIFUによる治療をしてもらったのだが、僕はこの治療以降(実際には血精液症を発症以降)、女性との性交渉は持っていない。