20年ちょい前の話、当時大学生だった僕は学業もそこそこに友達に紹介してもらった競輪場のアルバイトに明け暮れていた。阪急電車に揺られ東向日駅で下車し徒歩10分でたどり着くのが京都向日町競輪場。仕事は走路審判補助、簡単に言えばレース中に落車した選手を助ける仕事。正直落車さえなければ日本一楽なアルバイトではないかと思う。
しかし一度事故が起これば戦争である。時速60キロで走る大柄の男が地面に叩きつけられるのだから、鎖骨骨折程度はかすり傷、ひどい時は血を吐きながら大きなイビキをかいている事もあった。あきらかに命すら危ない状態である。そんな中で無事にお医者さんの前まで送り届けるのが僕達の仕事なのだが、あのなんとも言えないレース中の緊張感はいまだに忘れられない。
そんなある日のバイトの控え室、何気なく置いてあった向日市の広報誌だったか何かを読んでいた僕の目に衝撃の記事が飛び込んできたのだ。
競輪場の近所にいた怪物中学生
向日市立寺戸中学校に怪物がいる。ポジションはショートだがリリーフでピッチャーをやればMAX138キロのストレートでバッターをねじ伏せる。京田辺ボーイズというチームに所属し、夢はPL学園に行って甲子園に出る! といった内容だった。
すぐに野球好きの社員さんに記事をみせたのを覚えている。
かみじょう「競輪場の近所にとんでもない中学生いますね!」
社員「とうとう中学野球もチェックか!?(笑)」
かみじょう「この子は要チェックですわ! 今江敏晃君!」
こうして僕は今江選手を知ったのだ。
それから2年後の2000年夏には二年生にしてPL学園の四番をはりチームを甲子園に導いた。バイト先ではこうだ。
かみじょう「こないだのPL学園今江君の活躍みました?」
社員「それ誰や?」
かみじょう「2年前に話してた寺戸中学校の野球すごい子ですやん!」
社員「えっ、もう甲子園でてんの?」
かみじょう「凄い成長ですよねっ!」
社員「お前はずっとバイトやけどな」
かみじょう「やかましわーい!」