すぐに仮面仲間がたくさんできると思っていたが…

――創設してすぐ、多くの仮面浪人仲間ができたのでしょうか。

松尾 創設初期は、10名程度だったと思います。当時の私は、早稲田大学を「東大、京大に落ちた人たちが大挙して押し寄せる大学」だというか、「本当は違う第一志望があって、満足していない人が集まる場所」だと考えていたんです。なので、すぐに仮面仲間がたくさんできるだろうと思っていましたが、そうはならなかったですね。

 今にして思うと、その考え方は実情からかけ離れているのがわかります。当時、自分の周囲の早稲田大学法学部合格者がおおむね東大・京大志望だったので、勝手に滑り止めの大学のように認識していました。

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活動内容と最終目標

――具体的に「仮面浪人・再受験交流会」は、どのような活動をされていたんでしょうか。

松尾 会員が頑張れるような環境調整が主な仕事でした。外部講師を呼んでの講演会、湯島天神への合格祈願のほか、日々の勉強会などで会員同士の絆を作るなどですね。

――やはり、入会者の最終目標は「合格」でしょうか。

松尾 希望校に合格できれば何よりですが、受かった人間だけが救われるという価値観ではなく、たとえうまくいかなかったとしても、その人の人生にとってこの仮面浪人が何かしら意味のあるものになってほしいという考えです。

 

――「仮面浪人・再受験交流会」はさまざまな志望校の人がいますよね。代表として、いろいろ配慮しなければならない場面があると思いますが。

松尾 そうですね。たとえばAさんが志望している大学に、Bさんは現在在籍しているが不満があり仮面浪人をしているなんてことはよくありますね。ですが、入会してくれる人は、そうしたことはあまり気に留めていないように思います。

松尾さんが喜びを感じる瞬間とは

――松尾さんは創設者としてさまざまな場面に立ち会ってきたと思いますが、喜びを感じる瞬間はどんなときでしょう。

松尾 さまざまなパターンがありますが、早稲田生の会員が仮面浪人の末に東大文Ⅰに合格して、目標にしていた官僚になったり、慶應義塾大学法学部から仮面浪人を経て東大文Ⅰを受験して、不合格だったけれど、その後、予備試験・司法試験に合格して弁護士になり現在は大手法律事務所で仕事をしていたり。

 東大に合格して夢を叶えたとしても、東大に不合格であったとしても自らの目標を達成できた力強い例を目の当たりにすると、腐らずに頑張れば道が開けるのだと改めて認識させられます。そうした受験生たちの生き様を追体験できることは、創設者としてこの上ない喜びかもしれません。