膨大な時間を受験勉強に費やし、ようやく大学に入学するも、そこからさらに別大学への転学を目指す人がいる。
せっかく合格した大学でキャンパスライフを楽しむでもなく、バイトに明け暮れるでもなく、あえて「仮面浪人」の道を選び、彼らを再び机に向かわせる原動力は、コンプレックスなのか、打算的計画か、それとも別の何かか――。
ここでは謎に包まれた仮面浪人経験者へ行ったインタビューのもようを紹介する。
取材協力:「仮面浪人・再受験交流会」
冨塚美緒さん(仮名/20代)の遍歴
・現役時代に京都大学文学部を受験し、失敗。
・有名私立大学の文学部に進学後、大学4年生時に京都大学を再受験し、失敗。
・卒業2年後に再々度京都大学を受験するも、不合格。
・現在は出版社で編集者として働く。
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家庭が「現役で行きなさい」という方針
――冨塚さんは現役のときに京都大学を受験して失敗していますが、浪人する選択をしなかったのはなぜでしょうか。
冨塚 家庭が「受かったところに現役で行きなさい」という方針でした。それこそ、「置かれた場所で咲きなさい」という感じだったと思います。また当時の私も、浪人をしてでも第一志望合格を掴みにゆくほどの覚悟や強さがなく、親の意見に納得していました。
――その後、進学先での生活はどうでしたか。
冨塚 それなりに充実していたと思います。私自身、入学当初は「この大学で頑張ろう」と思っていましたし、自身に関心のあることばかり学べる大学の講義は楽しかったです。ただ、自然体で大学生活を楽しむというよりは、複数のサークル活動やアルバイトのかけもちをするなど、頑張って大学生活を充実させようという感じで忙しく過ごしていました。
京都大学をなぜ再受験したのか?
――大学4年生で再び京都大学を受験したのは、なぜでしょうか。
冨塚 やはり「京都大学に進学したい」という気持ちがずっと残っていたからだと思います。個性豊かな学生達と切磋琢磨できる環境に憧れていたんですよね。ちょうど、私が大学3年生になったころ、コロナ禍に突入して、授業も完全リモート、サークル活動やアルバイトも自粛という状態が生活の基本になると、立ち止まって考える時間が増えたんです。すると、やはり京都大学に進みたいという気持ちが自分の中で強いと改めて気づかされて。