膨大な時間を受験勉強に費やし、ようやく大学に入学するも、そこからさらに別大学への転学を目指す人がいる。
せっかく合格した大学でキャンパスライフを楽しむでもなく、バイトに明け暮れるでもなく、あえて「仮面浪人」の道を選び、彼らを再び机に向かわせる原動力は、コンプレックスなのか、打算的計画か、それとも別の何かか――。
ここでは謎に包まれた仮面浪人経験者へ行ったインタビューのもようを紹介する。
取材協力:「仮面浪人・再受験交流会」
山岸涼介さん(仮名/20代)の遍歴
・関東地方の中堅高校から東京工業大学(現・東京科学大学)を受験し、不合格。
・浪人の末、再度東京工業大学を目指すも希望の学部の合格に至らず、難関私立大学の理工学部へ進学。
・現在は、文系への転身を視野に入れ、有名私立大学文系学部への受験を検討している。
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「外資系企業に勤務したい」という目標
――山岸さんは現在、同じ偏差値帯の大学への転学を希望しているんですね。
山岸 一般的に仮面浪人をする場合、偏差値や格のランクアップを狙うのが定石ですが、私の場合は違って、高校生くらいのときから「外資系企業に勤務したい」という目標があって、それを叶えるためのベストな道を歩みたいという考えがあるんです。現役受験生時の私がリサーチしたところでは、外資系コンサルとして認められている人たちのなかには理系の方がとても多くいました。なので、優秀な人材を数多く輩出していた東京工業大学を受験しました。しかし第一志望の学部には不合格で、ひとまず別の私立大学に入ることにしました。
実際に大学に在籍してみると、第一志望だった大学・学部以外からも、思っていたより多くの人たちが外資系企業に就職することを知りました。しかも、理系だけでなく、文系の学生も活躍してることがわかったんです。「それなら文転したほうが有利だ」と踏んで、受験勉強を始めました。2025年に受験予定です。
文系学部での就職活動を選んだワケ
――文系学部に転学するほうが有利と考えたのは、どうしてですか?
山岸 最近の就職活動では、“ガクチカ”(学生時代に力を入れたこと)が問われます。このまま理系でいた場合には、大学院へ進学して研究成果を出さなければ、おそらく人事担当から認められないでしょう。一方で、文系学部は課外活動への向き合い方を問われる場面が多いと聞きます。文系学部での就職活動のほうが戦いやすいのではないかと判断しました。