――当時はどのようなことを考えていましたか。
冨塚 大学1、2年生のとき、私は一種の強迫観念から「予定のない時間が怖い」といった様子で、あまりに多くの予定を入れすぎていました。そのうち、心身の負担が重なってか、文学部生なのに本を読むことすらままならなくなってしまったんです。学業もおろそかにしてしまった後悔や、小さい頃から本が大好きで文学部に入っただけに、「本が読めない文学部生って何なんだろう」という自責が強く、「大学生活を一からやり直したい。もう一度受験をして、京都大学文学部を目指そう」と思ったんです。
時間をおいてからの再受験
――大学入学後、改めて京都大学を再受験することは、友人や家族には打ち明けていたのでしょうか。
冨塚 近しい友人には言っていました。温かい反応が多かったですね。「やるからには頑張って」という声をもらったと思います。両親は「今の大学を卒業してからなら良い」という意見でした。それもあって進学先を卒業するタイミングに合わせて京都大学へ行きたいと考え、4年生時に受験しました。
――仮面浪人をする仲間は、キャンパスライフではなかなか見つけにくいものですか。
冨塚 そうですね。もしかすると、大学1年生のときにすぐ再受験をする人はいたのかもしれませんが、私の場合は時間をおいてからの再受験でしたから、余計に同じ境遇の人が見つかりにくかったと思います。
――その後、社会人になってからも再々度受験。結果、志望校合格には至りませんでしたが、再受験時代をどのように振り返りますか?
冨塚 私は結果として再受験を成功させることはできませんでしたが、現在、自分の関心が高かった分野で仕事をさせていただいています。希望する大学への進学が叶わなくても日々は続いてゆきます。受験や大学はあくまで過去の一時点であって、その人が今何を目指し、何を考え、どのように日々を過ごしているかの方が重要だと個人的には思います。