もう一度人生をやり直すとして、仮面浪人を選ぶかは微妙
――藤井さんは不本意な大学受験結果だった人に対して、積極的に仮面浪人を薦めたいですか。
藤井 いや、積極的に薦めることはありません。まず前提として、仮面浪人はしないほうがいいに決まっているんです。あくまで私の場合、仮面浪人をした先でたまたま良い出会いがあっただけで、もう一度人生をやり直すとして仮面浪人を選ぶかは微妙ですね。
――それはなぜでしょうか。
藤井 社会に出遅れてしまうじゃないですか。それに、学費諸々の負担を親にかけることになってしまいます。
私の場合、両親ともに地方で生まれ育ったからか都会志向があったので、首都圏の大学へ進学が叶ったことを満足に感じてくれていたんです。それだけに、私が仮面浪人したい旨を話しても、「何が不満なのか」となかなか納得してくれませんでした。確かに、両親の気持ちもよくわかります。
腹を決めて道を突き進む覚悟がないと難しい
――そんな両親に対して、どのような感情をお持ちなのでしょう。
藤井 仕送りなどの経済的負担を両親にかけることになってしまう点については、申し訳なく思っていました。幸い、私は編入学受験までは仕送りをもらって、それ以降は給付型奨学金と返還型奨学金を組み合わせることによって生活していたんですが、経済的な問題は多くの人にとってネックになると思います。
私の両親は教育に理解のある人たちです。それでも兄弟が他にいるなどの事情があって、一度入った大学に在籍しつつ仮面浪人をするという選択は手放しに応援できるものではなかっただろうなと思います。
私としても、仮面浪人のサークルに入っていながらも、仮面浪人を称賛するつもりはありません。やはり仮面浪人とは、人生を少し軌道修正するための手段であってそれ以上でも以下でもないと思っています。
不本意な大学へ入学したとしても、そのまま通った先に大切なものが見つかるかもしれないし、本当の正解はわからないと思うんです。だから、仮面浪人の道を選ぶ人は、腹を決めて道を突き進む覚悟がないと難しいのではないかと私は思っています。