40年度には約57万人という途方もない数の介護職が足りなくなると推計
だが、これら政府の対策には、いくつかの不安材料も見える。
医療と介護のタスクシフトが実施されれば、円滑なケアというメリットが期待できる一方で、介護職員の更なる業務負担にならないだろうか。物価が上昇する中で介護職員のベースアップは十分といえるのか。訪問介護の現場に外国人労働者が増えると、サービスの質が担保できるのかなど、不安や疑問は挙げればきりがない。
いずれにしても、25年も介護を巡る環境は危機的な状況から脱することはできない。最新のデータでは、40年度には約57万人という途方もない数の介護職が足りなくなると推計されていることからも、このままでは高齢者の介護が立ち行かなくなるのは誰の目にも明らかだ。
介護事業者の経営難が不十分な職場環境や待遇を生み、さらなる人材不足を招く。少ない人手で現場を回そうとすると、サービスの質が低下して利用者が被害をこうむる――。介護業界は負のスパイラルに陥っている。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2025年の論点100』に掲載されています。