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 例えば、日本には富士山が見える丘がたくさんあり、その地区名に「富士見」という言葉がついているのだから、いっそそれらの地域をまとめて、「FUJIMI」という地域名で世界に打ち出せば、新しい観光資源になるかもしれない。「THE ◯◯HOTEL TOKYO FUJIMI」なんて、世界中から「行きたい!」が生まれそうだ。同じように「桜」や「水」や「野鳥」や「食」など何のテーマでもエリアの名づけは可能だし、ぶっちゃけタダなのでぜひ観光のために名前化するアイデアを実現してほしいと思う。

丘からのぞむ富士山 ©AFLO

 これまでも、「うどん県」「餃子の街」「鋳物の街」といった「スローガン」で観光活性化が図られてきた例はあるが、上記のようにいっそ地区名にしてホテルや飲食店や商業施設でも使えばもっと価値化できるかもしれない。

「マイナスをプラスにできる」思考ツール

 ちなみに名付けはビジネス上のマイナスイメージを払拭することにも使える。例えば「雑居」を「シェアオフィス」にすればおしゃれだし、「ひとりで寂しい食事」も「おひとりさま」と呼べば誇りが持てる。地方で、賑わいがなくて閑散としている街も、「世界一静かな街」とすれば観光資源になるし、「いちごパフェ」も「いちごすぎるパフェ」と言えば俄然食べたくなる。名付けはマイナスをプラスにもできるし、プラスをさらにプラスにすることもできる強力な思考ツールだ。

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 余談だが、名付けの「マイナスをプラスにする」力を間違えて使うと悪い影響も加速してしまうので要注意。例えば「覚醒剤」という名前には「覚醒」という、本来目が冴えるとか元気になるという意味の単語が入っているのでそもそも違法薬物に使われるべきではないだろう。アートディレクターの秋山具義さんは、いっそ「人生台無し剤」とか「うんこお漏らし剤」に変えたほうがいいと話されていたことがあるが、確かに抑制効果としてそのほうが適切だ。

「暴走族」という名前もいけない。暴走はしばしば映画のタイトルにも使われる青春の象徴だから、前向きな感じに捉える人もいるからだ。みうらじゅんさんが、暴走族は「おならプープー族」とかにすればいいと提言されていて素晴らしいと思った。それならたとえ暴走したい人がいても恥ずかしくて入れないだろう。

 名前の持つ力を使えば、日本をもっと魅力的にしたり、良くないことを抑制することもできる。しかも名前をつけるのはタダ。この最高の武器を積極的に使って、仕事から地域の可能性まで大いに活性化してほしいと思う。

 名前による価値化には、地域を活性化する大きな可能性があるのだ。