子どもの人権が侵害されている
日本において受験は子どもの将来に向けた重要なステップの一つと考えられています。しかし、その過程で子どもの人権が侵害されています。教育虐待の発生リスクに社会が気づき、虐待の生じない教育を工夫しなければなりません。子の将来を思う親を毒親と責めても解決には結び付かないのです。
教育虐待は、ヒエラルキーのある競争社会において大人たちが子どもたちに社会経済的地位を得させるためにやむを得ないと認め、子どももまた大人の想いを背負って期待に応えようとすることから起きる社会的な意味でのマルトリートメント(心理的な虐待を含めた虐待)の一つだと考えられます。筆者が代表を務める一般社団法人ジェイスでは、2023年から社会的マルトリートメント予防全国集会を開催しています。社会的マルトリートメントの概念を深く理解しようとする人を募り、その人たちを地域の核として、地域ごとに自分たちの「ものさし」(価値観)を見直そうと考える人を少しずつ増やし、何をすべきか考え、実行に移すためのサポートをしています。虐待してしまう親が次々と生まれてくる背景を分析し、自分たちの言動と価値観を顧みて、皆で予防のアクションに取り組むことが必要ではないでしょうか。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2025年の論点100』に掲載されています。