学習院大学卒業後、日本赤十字社へ就職したことも注目された。大学院進学や留学が予想されていたなかで、人の役に立ちたいという理由から就職を、しかも災害被災地への対応などを担う日本赤十字社へ、そしてボランティアに関する業務に従事するなど、象徴天皇制のあり方とも合う仕事に就いた。その意味で、愛子内親王は人間的にも問題ない。
現在の日本社会は、女子差別撤廃条約の批准、いわゆる男女雇用機会均等法の制定など、これまで以上に性別による差をなくす方向性へと向かっている。男女平等の社会が実現するように様々な努力がなされているなかで、なぜ天皇だけが男性に限定されるのだろうか。
それを規定したのは明治期である。そのときは、陸海軍を統帥する大元帥としての天皇の存在があり、男性に限定する必要があった。「家制度」が構築されるなかで、戸主である夫に絶大な権限を持たせる必要があった。だからこそ、国のトップである天皇も男性でなければならなかった。しかし、いずれも現在ではなくなった。それゆえ、今では天皇を男性に限定することも相容れない思考になる。
天皇は日本国憲法において、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と定められている。それがなぜ、半分の男性しかなれない制度になっているのか。それこそ、半分の「象徴」でしかない。
日本だけが「遅れた」国になる
現在、国会では女性天皇に関する議論は行われていない。女性皇族が結婚後も皇族に残って公務を行う女性宮家案、敗戦後に皇族から離れた旧宮家と呼ばれる人々を皇族の養子にする案、の二つが検討の対象となっている。
しかし、前者は安定的な皇位継承にはまったく意味がない。愛子内親王や佳子内親王が結婚後も皇族に残ったとしても、その子どもなどは一般人として扱われる。結局は、これから数十年間、公務を担ってもらう人を増やすだけの方策である。つまりこれが実現したとしても、基本的には悠仁親王しか次世代で天皇になる皇族はおらず、その妻は男性皇族を産まなければならないというプレッシャーに押しつぶされる。そんな男性と結婚しようとする女性はいるのだろうか。