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 トムキャットのもうひとつの魅力は、その謎めいた経歴にあります。アメリカ海軍で2006年の全機退役まで33年にわたり最前線を守り続けたというだけでもじゅうぶんに偉業なのですが、もうひとつの運用国であるイラン空軍ではいまだに現役であることが知られています。

 1974年にイラン空軍の次期戦闘機としてF-15とのコンペを勝ち抜いたトムキャットは79機が納入されましたが、79年に起きたイラン革命によって米国からの支援は途絶。しかしその後もイランはありとあらゆる方法を使ってトムキャットを維持し、さらには独自の技術で強化改造を施すなどして現在も多数を現役で運用しています。

『トップガン』でトム・クルーズが操縦しているのもF-14だ

「トップガン」でトム・クルーズとともに時代のアイコンに

 そして、F-14を語る上で欠かせないのが、映画やゲーム、アニメでの活躍でしょう。1982年放送のテレビアニメ『超時空要塞マクロス』には可変戦闘機が登場し、主人公が所属するスカル小隊のマーキングは、F-14を運用する飛行隊のなかで絶大な人気を誇る「ジョリー・ロジャース」(黒い尾翼にドクロのマーク)がほぼそのまま踏襲されています。

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 1986年に公開された映画『トップガン』ではアメリカ海軍の全面協力によって撮影されたF-14の発艦シーンや空戦シーンが世界中の目に留まり、主演のトム・クルーズとともに一躍時代のアイコンとなりました。

『トップガン』の影響はその後各国の映画やドラマはもちろん、『アフターバーナー』をはじめとした数多くの空戦ゲームにも波及。実機が誕生して以降のポップカルチャーにおいても象徴的な戦闘機として君臨してきたのです。

「超時空要塞マクロス」に登場したメカ・バルキリーの胸部のドクロマークは、ジョリー・ロジャースのマークそっくり(左・マクロス公式サイトより、右・wikipediaより)

 もちろん、2022年公開の『トップガン マーヴェリック』では地上シーンで実物大模型を使い、空戦シーンでは3DCGを駆使してトムキャットが再度「出演」を果たしています。さきのエピソードを読めば、米海軍から退役したはずのトムキャットをいまだに運用している劇中の「ならずもの国家」の設定も頷けるはずです。