航空自衛隊の「ブルーインパルス」を追い続ける隻眼の航空写真家がいる。その黒澤英介氏が2024年5月に上梓した写真集FLIGHT OF DREAMS ブルーインパルス~感動と夢の翼~(大日本絵画刊)は、20年以上ブルーインパルスをファインダー越しに捉え続けた集大成ともいえる作品だ。

 左目が見えないハンデを抱えながらも、なぜブルーインパルスを追い続けたのか、黒澤氏に話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)

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5歳で左目を失明...それでもブルーインパルスを追う“夢”を諦めなかったワケ

――今回写真集を出したきっかけは。

「これまでもブルーインパルスに関する写真集は出させていただいていましたが、時系列や記録的な要素を取り除いた、ブルーインパルスが持つ『躍動感』を前面に押し出した写真集を一度は出したい、と以前から思っていました。今回、武田頼政さん(ノンフィクションライター。本書の編集も担当)から同様のお話をいただき、写真集を出すことになりました」

航空写真家の黒澤英介氏(本人提供)

――そもそもなぜ航空写真家を目指されたのでしょうか?

「母の実家が、ブルーインパルスが拠点とする宮城県の松島基地のそばにあり、小学5年生のころ、たまたま休日に実家に連れて行ってもらったときに、基地の上で青い飛行機がスモークを出して飛んでいるのを見て感動したのですが、それがブルーインパルスだったんです。すぐに夢中になって、最初は航空自衛隊でブルーインパルスの整備員になりたいと思っていました」

©黒澤英介

「ですが、幼少期に事故で左目を失明していて、高校3年生の時に自衛隊の説明会に行った際『その状態だと難しい』と言われてしまい、すごく落ち込みました。けれど、『整備員が駄目なら、好きで撮っている写真で航空写真家になって、ブルーインパルスに近付こう』と決意したんです」