2024年5月に発売された航空写真家・黒澤英介氏による写真集『FLIGHT OF DREAMS ブルーインパルス~感動と夢の翼~』(大日本絵画刊)。同書の冒頭には長年交流のある元ブルーインパルス4番機隊員の高橋喜代志氏のインタビューが掲載されている。
高橋氏にブルーインパルスの操縦にまつわるエピソードを語っていただいた。(全2回の2回目/最初から読む)
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――今回の写真集を出された黒澤さんとはどういったきっかけで知り合ったのでしょうか?
「私が宮城県の松島基地の臨時飛行隊でパイロットをやっていた1980年代後半は、ブルーインパルスの3代目機種の『T-4』が飛び始めた頃でした。当時はよく松島基地の外柵沿いに写真を撮りにくる人たちがいて、滑走路上からはそうした人影が見えるんです。その中の1人に黒澤くんがいたのかな」
――いわゆるミリオタのカメラマンだったわけですね。
「周囲からも『いい写真を撮る人がいる』と黒澤くんの評判は常々聞いていました。直接の面識は仙台で彼が写真展を開いたときです。他の隊員と一緒に見に行き『いい写真撮ってるよね、頑張ってね』と声をかけました。飛行機がメインというよりも、その写真の中に人や風景が入っていてそれを含めた情景になっている。構図も含めてセンスがいいなと感じていました」
――今回の写真集について、黒澤さんは「ブルーインパルスの躍動感にこだわった」と仰っていました。高橋さんのご感想はいかがですか。
「ほかの写真集では見たことがない構図の写真も多くあるし、躍動感は感じますよね」
ブルーインパルスの隊員が一番やりがいを感じる“瞬間”とは
――高橋さんは4番機の隊員として、航空祭などで展示飛行をされてきました。操縦しているとき、観客の姿は見えるのですか?
「基本的にファンの方々の姿を直接感じるのは着陸してからですが、宙返りで飛行場に向かって降りていく時、駐機場に展示してある飛行機のまわりにお客さんがいると、普段はコンクリートで白い地面が黒っぽく見えるんです。数が多ければ真っ黒に見えるときも。そういう時は操縦しながら『あぁ、すごい人来てるんだな』と思っていました。ファンの方々のそうした熱量に直接触れたときに、隊員として一番やりがいを感じていました」