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――ブルーインパルスは6機編隊のコンビネーションが美しいですが、一番難しい課目はなんですか?

「私が担当していた4番機だとすれば、ダブルファーベル(1番機と4番機が背面飛行の状態で2、3番機と共にダイヤモンド形の編隊をつくる)やスリーシップインバート(1番機以外の2、3、4番機が背面飛行)でしょうか。そもそも、背面飛行でのフォーメーションを維持するということ自体が、普通の戦闘機部隊では絶対やらないことなので難しいんです。さらに背面飛行は、リーダー機に対して位置のズレを直すときに、リーダー機に向かって操縦かんを傾けると、逆さの状態なので逆に離れていってしまうんです。練習していた頃は、ズレたと思ってとっさにリーダー機側に操縦かんを向けて、かえってリーダー機から離れていってしまうことが結構ありました」

©黒澤英介

「頭のネジが2、3本抜けているんじゃないかと...」

――背面飛行といった特殊な操縦は、配属当初に先輩から教えてもらえるものなのですか?

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「最初のころは、飛行する際に先輩が後ろに乗ってくれますが、やって見せてくれるわけではないので、とにかく自分でやるしかないんです。最初のフライトで先輩の4番機に乗せてもらったときは、他機とギリギリまで接近して飛行していたので『この人たち、頭のネジが2、3本抜けているんじゃないか』と思いました(笑)。でも、実はアクロバット飛行の課目をやるときは、近いところより離れてやるほうが難しいんですよ」

――それはなぜでしょうか?

「たとえば宙返りをするとき、飛行機の速度は常に変わっていきます。上に上がるときは減速するし、下を向いているときは加速します。1番機とその真後ろにいる4番機は距離が離れているぶんだけ、減速の度合いが変わってフォーメーションが崩れやすいんです。それをエンジンのパワーでコントロールするのですが、距離が離れると速度の差が大きくなる。逆に近付いていれば少ないパワーでコントロールできるので、やりやすいんですよ」

©黒澤英介

――黒澤さんの写真集に関して、お読みになる方に一言お願いします。

「写真集を通じてブルーインパルスの良さを感じ取ってほしいのはもちろんですが、それ以上に黒澤くんの才能だったりが読んでくれるみなさんに伝わるといいのかなと思っています」