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 冒頭の答弁は、そうしたメディアスクラムのなかで今井に直撃取材した結果だ。私も御多分に漏れず、「Sアミーユ川崎幸町」などの関連現場を回っていた。

 今井の名前と住所を漏らした背景には、今井を追い詰めるには材料が乏しいことがあった。当時を振り返れば、状況証拠しかなかったことは確かで、これを打開したい警察がマスコミを使い事件を炙りだそうとしていた感すらあった。

 このとき、警察が今井を疑う理由は3つあった。一つ目は、繰り返しになるが、入居者3人が転落死したすべての夜に宿直していたのは今井、ただひとりだったことだ。

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 二つ目は今井の素行である。今井は2015年1~4月の間に、入居者3名の居室から現金11万6000円と指輪など4点を盗んでいた。この窃盗事件で、警察は今井を同年5月21日に逮捕。今井は執行猶予付き有罪判決を受け、施設からは懲戒解雇された身だった。

 三つ目は第一発見者だ。それが2件目の仲川さんの場合を除き、いずれも今井だったのだ。

男性職員4人が入所者に「死ね」と暴言

 一方、「Sアミーユ川崎幸町」では、別の問題も起きていた。2015年に入り、一連の転落死以後も、さまざまなドラブルを起こす問題施設であることが露見したのだ。

 同年3月には、男性入居者(当時83歳)が浴槽内で死亡する事故が発生していた。

 同年5月、認知症を患っていた入所者の女性(当時85歳)に対して、今井とは別の男性職員4人が「死ね」と暴言を吐いたり、頭をたたいたりするなどの虐待を日常的に働いていたことが、家族が隠し撮りした映像からわかった。

 私が虐待を受けた女性の長男を直撃し、『FRIDAY』で報じたのは9月半ばのことだ。女性の長男から証拠として提供された映像には、女性をベッドに放り投げる――「死んじゃうよ」と言い続ける女性の首を2秒ほど絞める――など計4回の虐待が映っていた。

写真はイメージ ©getty

 女性の長男は、「短期間で3人が転落死する状況を防げなかった施設です。一歩間違えば、自分の母もどうなっていたかわかりません」と憤りをあらわにした。そして「刑事告訴も検討している」と続けた。