「ディズニー・アニメーションの頂点」と評された名作の前日譚
私が『ライオン・キング』をはじめて観たのは、アニメーションでも映画でもなく、劇団四季の舞台『ライオンキング』だった。
パペットを持った俳優や、動物のマスクを頭上に載せた俳優たちが現れたときは一瞬ぎょっとしたが、テーマ曲「サークル・オブ・ライフ」をはじめ魂を揺さぶる数々の楽曲と“サバンナ”を感じさせる熱気に、すぐに夢中になった。以来、数え切れないくらい劇場へ足を運んでいる。
この劇団四季の舞台『ライオンキング』は、1年前の2023年に、日本での初上演からちょうど25周年を迎えたという。25年間ほぼ毎日(日によっては昼夜2回)上演し続けているのに、いまだに連日チケット完売の勢いで集客できているのは、舞台・演技の素晴らしさはもちろん、演目自体の魅力が高いというのが大きいといえる。
ディズニー映画『ライオン・キング』シリーズのはじまりは、1994年に公開されたアニメーション版『ライオン・キング』である。
第67回アカデミー賞®作曲賞、主題歌賞にも輝いた心に響く音楽と、家族や生命への限りない愛を描いた感動のストーリーは、ディズニーが「ディズニー・アニメーションの頂点」と評するもので、時を経てもまったく色あせることがない。
続篇が3まで製作されたあと、2019年には「超実写版」と謳う、フルCGの実写版『ライオン・キング』が公開されており、本作はその実写版の前日譚となる。
『ムーンライト』(16年)でアカデミー賞®作品賞、脚色賞などを受賞したバリー・ジェンキンスが監督を、『アバター』(09年)などに参加し、『アバター4』(25年公開予定)でも製作総指揮を務めるピーター・M・トビヤンセンが製作総指揮を務めている。
声優陣も豪華すぎる顔ぶれだ。主演のムファサとタカには未来のハリウッドを担う若手俳優をキャスティング。冷酷な敵ライオン・キロスを北欧の至宝・マッツ・ミケルセンが演じるほか、世界の歌姫ビヨンセ・ノウルズ=カーターがシンバの幼なじみで後の妻となるナラを、そのビヨンセとJAY-Z(ショーン・コーリー・カーター)の娘、ブルー・アイビー・カーターがシンバの娘キアラを演じている。
日本では「親子連れ」をメインターゲットに据えているせいか、超実写プレミアム吹替版の公開が目立つが、日本の吹替声優陣も「プレミアム」と呼ぶべき豪華さだ。ディズニー映画では、演技力は当然として歌唱力も最高レベル(かつ、「ディズニーテイスト」にふさわしいもの)が求められるが、歌舞伎界のエース・尾上右近がムファサを、日本が世界に誇る名優・渡辺謙がその宿敵・キロスを演じるなど、本作の質の高さがそのまま、いや、それ以上に展開されているといえる。