『ライオン・キング:ムファサ』が公開された。

 王の血筋を引くタカ(若き日のスカー)と、後に『ライオン・キング』の主人公シンバの父となるムファサの若き日の物語である。

血のつながりをこえて兄弟のように育ったタカ(後のスカー:左)とムファサ ©2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

「子ども」と「動物」で起死回生を狙ったか?

 近年のディズニー映画は、かつての勢いを失っているようにみえる。

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 ちょうど1年前の今頃に公開されたディズニー100周年記念作品『ウィッシュ(WISH)』は、日本ではそれなりに好調だったが、北米では興行収入がまったくふるわなかった。

 2009年にディズニー傘下に加えたマーベル作品でも不振に苦しんでいる。

 “視聴率に困ったら、子どもと動物を出せばいい”

 昔、テレビギョーカイのエラい人が、そんなことを言っていたのを、思い出す。

 本当に「子ども」や「動物」の登場が視聴率を左右するかどうかはわからないが、言われてみれば、子ども(あるいは動物)で視聴率を稼いでいるな、と思える番組は確かにある。

 そういう見方をするならば、クリスマス前の冬休み公開である本作は、「動物」しかも「子ども」時代を描くことで、起死回生を狙う意図があるのではないかと、疑いたくなってしまう。

 しかし、ディズニーの『ライオン・キング』は、親から子へ命の絆(サークル・オブ・ライフ)を受け継いでいく壮大な物語である。ディズニーが“キング・オブ・エンターテイメント”と評するだけあって、愛と友情、裏切りと信頼など、日本人にとって親が子に伝えたいことが「これでもか」とばかりに詰まっている。つまり、そもそもが「親が子どもに見せたい良質なコンテンツ」なので、別に意図など狙わなくとも、存在自体が冬休みの目玉企画となる王者作品なのだ。