ウォルト・ディズニー・ジャパンとアニプレックス製作(開発・運営はf4samurai)のモバイルゲーム『ディズニー ツイステッドワンダーランド』(通称『ツイステ』)は2020年3月に公開されると、10代・20代の女性を中心に人気を博した。昨年8月の報告では、7月時点でアクティブユーザー数114万人で、そのうち20代女性が46.5%、10代女性が35.5%であった。

『ツイステ』の本体はアドベンチャーゲーム、といってもストーリーの選択肢があるわけではないアドベンチャーゲームで、その中にカードの収集と育成、バトル、リズムゲームの要素がミックスされている。

「ディズニー ツイステッドワンダーランド」公式YouTubeより

ディズニーの悪役たちを再キャラ化

 まず目を引くのは、正式タイトルに「ディズニー」を冠しており、ディズニーの公式ゲームであることだろう。具体的には、『ツイステ』は、『ふしぎの国のアリス』『ライオン・キング』『リトル・マーメイド』『アラジン』などのディズニー作品をモチーフとしつつ、それらの作品のヴィラン(悪役)たちをキャラクター化しているのだ。

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 元々キャラクターであるヴィランたちをキャラクター化するというのは奇妙に聞こえるかもしれない。だが『ツイステ』が行っているのはまさにそれなのだ。

 ゲームの舞台はナイトレイブンカレッジという魔法学校。この魔法学校は、上記のディズニー作品をモチーフとする7つの学寮で構成されている。そして、それぞれの寮で学ぶ学生たちが、それぞれのディズニー作品のヴィランたちをモチーフにしたキャラクターになっているのだ。例えば「オクタヴィネル寮」の寮長アズールとその手下の双子は、『リトル・マーメイド』のヴィラン、アースラとその手下のウツボをモチーフとしている、というふうに。

「ツイステッドワンダーランド」 公式サイトより

「二次創作」の文化をなぞったセンス

 ここから先がある種興味深い。その「キャラクター」たちをデザインし、シナリオを書いたのは『黒執事』などで有名な枢(とぼそ)やななのだ。ディズニーの絵柄とはほど遠い、日本の少女漫画の流れをくみ、BLともそのデザイン感覚を共有する耽美的な人物造形だ(ちなみに枢やなは簗緒ろく名義でBL作品も手掛けていた)。ディズニーのキャラクターがキャラクター化されるとはそういうことだ。

 これは、日本における「二次創作」の文化を明らかになぞったものであるし、『ツイステ』自体、それがさらに二次創作物の対象となるのを見越していることは公式のQ&Aで二次創作について「お客様のモラルの範囲内でお楽しみください」と、非営利の範囲で行われることは想定しているのだ。

 さて、『ツイステ』はどのように楽しまれているのだろうか。上記の通り、ゲームとしてはアドベンチャーストーリー、バトル、リズムゲーム、キャラクター(カード)の収集と育成という要素がある。このうち、軸になるのは最後の「キャラクター」である。誤解を恐れずに言えば、ストーリーやバトルやリズムゲームは付け足しでしかない。『ツイステ』の楽しみ方は、自分の「推しキャラ」を選び、そのカードを手に入れ(R/SR/SSRとランクに分かれており、さらに服装も数種類用意されている)、レベルなどを上げて育成していくことを中心とするのだ。