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BL文化に通じていればピンとくる「キー」

 ただし、東が十分な注意を向けていないのは、データベース消費における性的なものの問題である。データベース消費のためのデータベース化は、必然的にさまざまなものの「記号化」をともなう。その中で当然に性的なものも記号化されていく。現実の人間がさまざまに、千差万別に持っている性的なものを記号化することは、多かれ少なかれ暴力をともなう。

レオナ・キングスカラー 「ディズニー ツイステッドワンダーランド」公式サイトより

 東が対象にするオタク文化の主体は、基本的に異性愛男性を前提にしていたように思える。つまり、そこでは女性の性を記号化して消費するということが行われていた。だが現在、(かなり広い意味での)オタク的消費の主体は男性だけだと想定はできない。

 9割以上のプレーヤーが女性である『ツイステ』はまさに、そのような消費の場になっているのではないか、という疑問は、検討せずには済ませられないだろう。

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 もちろん、このゲームに関して、あからさまな性的表現はない。ただし、このゲームには日本のオタク文化やBL文化に通じていればピンと来るような「キー」が仕込まれていることも確かである。

 例えば「バディ」というシステムでは、特定の二人の「バディレベル」を上げればその二人の組みあわせで戦闘では有利になる。このシステムは上記のような「二次創作」を暗黙に前提にしているというのは言い過ぎだろうか。『ツイステ』は男性を記号化し、消費しているという意味で、性の平等を目指していたはずの近年のディズニー作品に逆行するものではないか?

「消費」は男女で対称的ではない

 そのような疑問に対して私は、とりあえずは「否」と答えたい。『ツイステ』のキャラ消費は「性的消費」であり「男性差別的」であるという議論は、この社会に確実に存在する男性と女性の不公正を無視した議論だからだ。つまり、男性が記号化された女性を消費することと、女性が記号化された男性を消費することは、すくなくとも現在のこの社会においては、同じではない。

「現在のこの社会」とは、ジェンダーギャップ指数(2020年)において153か国中121位であるような社会のことだ。そのような社会で、記号化の暴力の意味や、「消費」の意味は男女で対称的ではありえない。

 このことを考えるにあたって、『ツイステ』がかなり意識的に「推し文化」とでも言えるものを利用している点は重要だろう。『ツイステ』のプレーヤーたちはアイドルグループの中から「推し」を選ぶように、『ツイステ』のキャラクターを選ぶし、推しキャラの誕生日イベントで限定カードを手に入れるために魔法石を貯めもするし、場合によっては課金をして魔法石を購入する。