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ディズニーランドで「ツイステ」コスプレはあり?

 つまり、『ツイステ』は、少女漫画やBLに接近する耽美的なキャラクターたち(陽キャに陰キャ、優等生に不良、男臭いキャラにノンバイナリー(無性別)まで、幅広く用意されている)を消費することを中心とするゲームなのだ。その極北は二次創作であり、それもBL方面の二次創作だろう。

 しかし、このゲームがディズニーの名前を冠していることには、違和感もあるだろう。ひとつにはディズニー作品とそのヴィランたちが、単なる「モチーフ」として扱われており、元になっている作品を知っている必要はまったくないということだ。

 これは例えば、東京ディズニーランド/シーに『ツイステ』のコスプレで行っていいかどうかという問題として表面化した。通常、東京ディズニーランド/シーは中学生以上のフル仮装(コスプレ)での入場を認めていないので問題にはならないが、ディズニーハロウィーンの期間のみ仮装は解禁される。ただしそこで認められるのは、ディズニーキャラクターのコスプレである。そのため、「ハロウィーン期間に『ツイステ』のコスプレが認められるかどうか」が大きな議論になった。

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『ツイステ』のキャラクターはディズニー公認ではない(実際は公認ではあるが)、世界観が違いすぎるといった否定的な意見が多く見られた。ただし、2020年はハロウィーンイベントが中止になったことでこの議論はうやむやになった。

東京ディズニーリゾートで大人のコスプレが許されるのはハロウィーンだけ ©共同通信社

ジェンダー平等への理念との相性は?

 もうひとつの問題は、基本的に性やジェンダーの平等に向かう変化を続けてきたディズニー作品の流れの上のどこに、このゲームを位置づけられるのか、という問題だ。

 近年のディズニー作品は、女性主人公が結婚をゴールとするようなかつての物語を脱却して、90年代のいわゆるディズニー・ルネサンス作品では女性主人公たちが女性であるゆえの束縛から自由になる物語へ、そしてさらには『アナと雪の女王』が代表するような、そもそも異性愛には重きが置かれず、女性同士のシスターフッドを前面に押し出す作品へと「進化」をとげていった。

ヴィル・シェーンハイト 「ディズニー ツイステッドワンダーランド」公式サイトより

 それに対し、前節で見たキャラクター消費のあり方は、哲学者・批評家の東浩紀が『動物化するポストモダン』(講談社現代新書、2001年)で「データベース消費」と呼んだものにぴったり一致する。それは「大きな物語」が失効したポストモダン状況ではキャラクターの特徴や物語の最小単位といったものの集積である「データベース」から、その都度利用できる要素を引き出して再編集し、終わりなき消費が行われるという議論である。

 東は(当時の)オタク的消費の特徴を日本文化論として敷衍したわけだが、「オタク的なもの」が一部の特殊な趣味ではなくごく一般的なものになった現在、その議論は有効性を増しているだろう。