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西山事件で見せた記者魂
毎日新聞記者だった西山太吉氏が「沖縄返還協定の密約」に関する外務省機密電文を省職員に持ち出させたとして逮捕起訴された事件だ。その裁判に渡辺氏は西山氏のために出廷し証言した。
あの件について「メディア・ジャーナリズムは、いくら機密と彼らが主張しようとも、政府が持っている機密を色々な手を使って取りに行かなければいけないのでしょうか」と問われた際に、ナベツネは「取りに行かないと駄目なんだよ、それは。何をやろうと」ときっぱりと答えていた(2020年のNHK 「BS1スペシャル」)。
先述の御厨貴氏もナベツネは「書かない記者」を非常に嫌い、あるべき記者像を追い求めたと述べている。ナベツネから学ぶことがあるとすればこの姿勢ではないか。対象に近づくなら忖度しないで書く。「たかが野球選手が」が印象的なナベツネだが「たかが新聞記者、されど新聞記者」なのである。
今も「書かない記者」はたくさんいるのだろうか? 最近ならSNSでの「オールドメディア論」についてナベツネはどう思っていたのだろう? 情報が閉じられた時代は政治家の懐に飛び込めば出世できたかもしれないが今の時代でもトップ記者になる自信はあるのか? そんなことを含め、一度でいいからナベツネに近づいて根掘り葉掘り質問して怒られてみたかった。