1ページ目から読む
2/4ページ目

―村山さんはご自身の承認欲求は強いとお感じですか。

村山 そうですね。私は相当強いと思ってるんですけど、話を聞いてみると、決して私だけじゃない。最近だと、兵庫県知事選をめぐるPR会社への報酬が問題になっている件で、会社代表がウェブに投稿した内容から「承認欲求を感じる」と話題になりました。承認欲求は本当に度し難いですよね。でも承認欲求があるから努力できるわけだし、良い面と悪い面の両方がある。ただそれが空回りすると、本人も周りもしんどい。

自分が作家に擬態してるだけだと思っていた

―これまで『ダブル・ファンタジー』『放蕩記』『ミルク・アンド・ハニー』で自身の承認欲求をみつめ、今回は創作上の承認欲求を描いたと言えます。賞を取りたいという作家の心に深くダイブしています。

ADVERTISEMENT

村山 こうしてみると承認欲求のお化けのようですね(笑)。今挙げてくださった3作品などで生来の自分自身への承認欲求を書いてきて、『ミルク・アンド・ハニー』のラストあたりで割合と決着がついたところがあったんですね。現実に今のパートナーとの生活が、落ち着いたものであることも大きく作用はしているんですけど。

「ところが、まだややこしく蠢いてるものはありました」

 ところが、まだややこしく蠢(うごめ)いてるものはありました。それは生活と両輪で走ってきた仕事の面です。謙虚なふりをしているようで嫌な感じに受け取られそうですが、私は自分のことをずっと認められずにきたんです。

 母親の前でいい子のふりをしたり、男の前でいい女のふりをしたりするのと同じように、私は、自分が作家に擬態してるだけだと思ってきました。こう書いたら人が感心してくれるだろうという文言を、才能のあるふりをしてトレースするのが上手なだけなのに、なんで誰もそれを見破らないのだろうと。作家になって以来、それが一番しんどくて、いつバレるか怖かった。