「遅っせーよ!! ふざけんなよ!」

 救急隊が119番要請があった飲食店のドアを開くと、男性の怒鳴り声が響いた。

「救急要請が立て込んでおりまして…」

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 事実、救急隊は、この現場に向かっている途中で交通事故に遭遇していた。その傷病者を他の隊に引き継いでいたために到着が遅れていたのだ。高圧的な物言いに救急隊長は色めき立つこともなく、淡々と男性の傷の具合を確認する。

 

「超血が出てて死にそうなんだよ」

 そう言いながら男性が差し出した指には、数ミリ程度の切り傷しかなかった――。

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SNSやニュースをにぎわす救急医療に関する問題

「タクシー代わりに救急車を呼ぶ」「現場ひっ迫で不要な要請には罰金を」「救急車を有料にすべきか否か――」

 救急医療に関する問題は、毎日のようにSNSやニュースをにぎわせている。2025年1月からフジテレビ系で放送が開始する清野菜名主演の「119  エマージェンシーコール」では、119番通報を受ける管制室を舞台にしているなど、救急医療の現場は現実だけでなく、創作の世界まで関心が高まっている。 

 2024年7月から連載が始まり、大きな話題となったマンガ『イチイチキュ!!!』はまさに、救急車に乗り、救命の最前線で戦っている救急隊員たちを描いている。

 

 舞台は架空の地方都市であるさいわい市の消防署。主人公の伊東めぐは3人のチームをまとめる隊長として、人々の命を救うために奔走している。現場で遭遇するのは、軽傷者、子どもの誤飲窒息、単身世帯の認知症、自殺未遂など症状から緊急性まで多岐にわたり、社会問題と結びついていることもある。