大森 ストーリーとしては、2004年──今から20年前にテレビの放送枠をわざわざ買い取って制作された『飯沼一家に謝罪します』という30分番組を放送していて、この番組は一体何だったかを追っていくフェイクドキュメンタリーです。
そこからさらに5年前の1999年、『幸せ家族王』という家族全員でチャレンジする視聴者参加型番組に出ていた飯沼一家が成功して、見事100万円とハワイ旅行をゲットするんですけど、その人たちに矢代が「悪いことをしてしまった」と言っているところから話がスタートします。どうやら矢代は番組の課題をクリアできるように運気を上げる儀式を飯沼一家からお願いされて、やったと。それによってチャレンジは成功したように見えたけど、その後、火事で飯沼一家は亡くなってしまうんです。
その矢代の儀式はどういうものだったのか、なぜ矢代は謝ったのかを当時の番組関係者への取材を重ねていくうちに、いろんな情報が集まって少しずつ明らかになっていくという構成です。
罪って結局のところ償うことはできないのかもしれない
──家族を扱ったものだと、現在公開中のドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』(藤野知明監督)にもつながるところですね。
大森 そうですね。4年前のオリンピックの音楽担当に関する炎上騒動の時に思ったのは、罪って結局のところ償うことはできないのかもしれないということです。そういうところにフェイクドキュメンタリーというフィクションを通じて視聴者が接続することで、自分自身の現実に置き換える。年末にその感覚を得るフィクションがあることはいいんじゃないかなと思います。深夜2時からの放送という『イシナガキクエを探しています』よりも更に深い時間にはなっているんですけれども。