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『田村はまだか』(光文社文庫)
第30回吉川英治文学新人賞を受賞した、初期朝倉かすみの代表作(2008年に単行本刊行)。
「とうの立った主人公(『肝、焼ける』)を書いてデビューしたので、40代の物語を描きたかった」と朝倉さん。
朝倉さんにとって初めての連載作品で、連作短編である。
深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。
「当時、勢いがあって、400字詰めの原稿用紙50枚に全部一晩で書いているんですよ」と朝倉さん。1、2回書けると「一晩で書ける女なんだ!」という気持ちに。部屋から見て月がゆっくり下がっていくのを眺め、「この位置で(いま書いているのが)30枚目だったらいける!」という勢いで執筆していた、と懐かしさを滲ませながら朝倉さんは話す。
※「編集者目線でいうと、一晩で50枚書くのは並大抵の人には不可能です」(編集K談)。