凶悪な緊縛強盗の温床となっている「闇バイト」。いかにして若者を“リクルート”し、非道に走らせるのか。匿名アプリで金額が提示され、身分証の提示を求められて――。潜入取材した取材班が目撃した衝撃の実態とは。
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週刊文春記者が“闇バイト”に応募
「今日だったら新宿で200万の運び案件ありますよ」
——え、そんなのあるんですか。気になります。
「あります、あります」
——“運び”っていうのはクスリとか……?
「そうっすね。たまに死体とかもありますけど」
週刊文春記者が“闇バイト”に応募したところ、電話口の男はあっけらかんとした口調でこう応えた。
さらに詳細を知るためやり取りを重ねていくと、衝撃の事実が明らかになったのである。
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今年8月以降、首都圏で凶悪な緊縛強盗事件が次々と発生している。
「その数は18件にも上り、逮捕者は40名を超えています。警視庁と埼玉、千葉、神奈川の各県警は合同捜査本部を江東区青海のテレコムセンター内に設置し、全容解明に向けて捜査を進めています」(社会部記者)
「反省している様子は全くない」
10月17日に千葉県市川市の強盗事件で逮捕されるなど、計3件の事件に関与した藤井柊容疑者(26)。取材班は、彼の陰惨極まる手口を知る人物に接触することができた。逮捕後、千葉地検による取調べの待機中に同部屋になったA氏が語る。
「あいつは反省している様子なんて全くなくて、表沙汰になっている3件の事件以外にも『何件かやった』と淡々と話していました」
A氏によれば、藤井が強盗を始めたのは10月初旬。1週間に一度、自宅のある愛知県から関東に乗り込み、無軌道な犯行を繰り返していたという。A氏が続ける。
「それぞれの報酬額は1件につき最低20万円。そこから奪った金額によって歩合が乗ると言っていた。犯行の際は指示役の男とテレビ電話を繋ぎ、指示を仰ぎながらやるんだと」
まだ表面化していない事件では、4000万円が金庫に保管されていたという。
「その金を別の人間に渡し、資金を洗浄した後、120万円を受け取ったとも豪語していました」(同前)
捜査当局には黙秘を貫きながらも、藤井はA氏に対してこんな自慢も口にした。
「キャッシュカードの暗証番号を吐かせるためには手の指を折るんだよ。それで番号を聞き出したら、もう一回同じ指を折る。それでも同じ番号を口にすれば、その番号で間違いない」
さらに、不敵な笑みを浮かべながら、過去の“武勇伝”も得意げに披露したという。