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 それから徐々に返済を遅らせていき、それでもポツンポツンと数万円ずつ返済する。こうすることで銀行に「返済する気はある」と思わせて時間を稼ぎ、事件の発覚を遅らせるのだ。

 住宅ローン詐欺事件の多くで、シエロ・ホームと同様の手口が使われた。だが詐欺はここで終わりではない。地面師詐欺師のほとんどは、ここからさらなる“錬金術”を使った。

 不動産を所有しているという信用を使って、ホームレスの名義で複数の消費者金融から限度額いっぱいまで金を借りるのだ。この時もホームレス自身は何も知らされず、消費者金融へ行くのは替え玉だ。

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「不動産を所有しているのは信用性の担保になるから、消費者金融は簡単に金を貸してくれる。車を購入してローンを組んで、納車された車を転売して金にすることもあった」

銀行には返ってくるアテのない貸付だけが残った

 森内たちが返済をストップさせた時点で、銀行は債務者として名前が登録されているホームレスに返済を迫ることになる。

写真はイメージ ©AFLO

 しかし「あなたは4000万円の住宅ローンを抱えています。返済してください」と銀行から言われても、ホームレス自身は何も知らされておらず当然返済能力もない。残ったのは返ってくるアテがないローンを組んでしまった銀行というわけだ。

 2005年の秋はこの一連の住宅ローン詐欺が大きな話題になり、10月11日の『スーパーモーニング あれこれニュースショー』(テレビ朝日系)でも『ホームレスの戸籍悪用 住宅ローン詐欺の実態』という特集が放送された。

 朝の情報番組が話題にしたぐらいだから、いかに当時ホームレスの成りすましが住宅ローンを組んで銀行を騙す詐欺が横行していたかがわかるというものだ。