2005年秋、住宅ローン詐欺が大きな関心の的になっていた。
10月11日の『スーパーモーニング あれこれニュースショー』(テレビ朝日)も特集を組み、銀行が巨額の金を騙し取られ、戸籍を悪用されたホームレスが多額の借金を背負う事件を特集していた。
ホームレスの替え玉にマンションを買わせ、銀行でローンを組ませる手口を番組の中で解説していたのが、“すべてを知る人物”として紹介されたX氏だ。
X氏自身も、自身の戸籍を住宅ローン詐欺に使われたことがある。
X氏が巻き込まれたのは、総額17億円にのぼる住宅ローン詐欺事件。首謀者は顔見知りの不動産会社の経営者だったが、X氏は「手口は実に巧妙だった」という。
ホームレスの戸籍を利用して養子縁組を行い、苗字を変えて架空の人物を作り出し、その人物の成りすましを用意する。あとは成りすましが銀行で住宅ローンを組み、金をだまし取る。
「免許証やパスポートはあるか」「保険証を持っているか」
驚くべきは、ホームレスを首謀者に紹介していたというのが「社会福祉センターの人や支援ボランティアなど」だったことだ。困っている人をサポートするはずの立場の人間が、小遣い稼ぎのためにホームレスを詐欺師に紹介していたことになる。
「ホームレスが見つかったらワンカップの酒でもやって、『住所と名前を紙に書いて下さい』と紙とペンを渡すんだ。『住所はない』と言われたら住民票のあった場所を聞けばいい。
後でその住所の役所に行き、住民票を取得して勝手に養子縁組し、関係者の息子や娘にする。そうすればその人の苗字が変わる」(X氏)
『スーパーモーニング』でも、知らない間に12回苗字が変わっていたホームレスが登場していた。
他には「免許証やパスポートはあるか」「保険証を持っているか」などを質問。「更新してない」「持っていない」という答えが返ってくれば、詐欺師らの思うつぼだ。ある程度ホームレス生活が長い者であれば、親族が探していたり住民票を確認する可能性は低い。
「あとは成りすましになる身代わりを見つけて、パスポートを作らせる。数日で成りすましの顔写真がついたパスポートが出来上がりだ」