「返済が終われば抵当権も抹消されて自分のものになるし、もし返済を飛ばしたって、自分がブラックになることはない。ローンの名義は成りすましのホームレスだからだ」(X氏)
購入した人間にとっては、金が払えなくなっても、そこを追われるだけ。物件は競売にかけられ、銀行がその金を回収する。
消費者金融から借りた金も、もちろん全額は返さない。
「2~3カ月は返済するが、その後は払わない。しかし金を借りたのはホームレスの戸籍を使って作り上げた“実在しない人物”だから探しようがない」(X氏)
物件所有者がいるはずの家に消費者金融の社員が訪ねても、すでに違う人が住んでいる。
「『○○さんは?』と尋ねられても『○○さんから買ったけど、どこにいるかわからない。自分も決済したのに、抵当権をはずしてもらえない。自分も被害者だ』と言えばいい」
実在しない人物に金を貸してしまった消費者金融は泣き寝入りするしかない。
1人の戸籍で「若ければ1人3000万円」をだまし取る
オーバーローンに消費者金融、車のローン、ホームレスの1人の戸籍でいくらだまし取れるのか。X氏の答えは「若ければ1人3000万円。40代ぐらいで2000万円、50代だと500万~1000万円」。それが数十人となれば、17億円という被害総額も現実的だ。
ホームレス自身は一連の詐欺に関与しておらず、戸籍を悪用されたことに気付くのは、社会復帰や体調不良などで施設に入所する場合が多いという。
「そうすると住民票が施設に移されるが、本人が本籍だと思っていたところにすでに戸籍はなく、しかも『鈴木から木村になってますよ』とか『もう4回も名前が変わってる』なんてことになる」
不幸中の幸いは、彼らにローンを返済する義務はないことだろうか。
「もともとはホームレスの戸籍でも、ローンを組んだ人物は苗字の違う成りすましだから別人ということになる。だから銀行もホームレスにローンを請求することはできない」
住宅ローン詐欺は、今でも形を変えて数多く起きている。X氏のスマホにはそういう話がひっきりなしに入ってきている。