次に詐欺師たちは、用意しておいたダミー会社やペーパーカンパニーの社長に成りすましをつけ、銀行から金を借りられる“きれいな人”に仕立て上げる。わざわざ社長にするのは「会社員にするより、会社を作って社長にした方が金は動かせる」ためだという。
「数カ月間その会社と架空の会社で金のやり取りをして、成りすましに給料が振り込まれているように見せかける。実際はいくつかのダミー会社の間で金を移動しているだけだから金は減らないが、銀行は『週に数百万円が何回も入ってくるちゃんとした会社』と信用する。そうすれば、成りすまし社長が住宅ローンの申請をしても疑うことなくローンが組める」
しかし一般的に住宅ローンは、銀行が売主に一括で不動産代金を払い、成りすまし社長がローンを背負うことになる。銀行からの担保がついた物件のためそのままでは売買もできない。詐欺師はどこから金を生み出すのだろうか。
「リフォーム費用などを上乗せして6000万円のオーバーローンを組むんだ」
X氏はそれに対して「オーバーローンを組むんだ」と語気を強めた。
「5000万円の物件を購入するのに、リフォーム費用などを上乗せして6000万円のオーバーローンを銀行で組む。リフォーム費用はこちらで用意した会社が見積書を出す。5000万円は売主に振り込まれるが、リフォーム代金は見積を出した会社に入金される。上乗せした1000万円はここで抜ける」
詐欺師たちはここまでに、ホームレスの紹介料やペーパーカンパニーを作る登記費用などを“先行投資”し、さらに成りすましを用意した養子縁組するなどの手間もかけている。その費用を、オーバーローンでまず回収する。
その後は不動産を所有しているという信用を使って消費者金融から金を借り、車をローンで購入する。
「会社があるので個人用と社用と2台購入可能だ。トヨタの新車を購入するなら、トヨタファイナンスのローンは使わない。トヨタで車をローンで買うと、ローンの完済まで所有権がトヨタファイナンスになるため転売できない」