自動車をディーラーローンで購入すると、代金の立て替え払いで購入する契約になるため、ローンが完済されるまで車の所有者はローン会社か販売店のままで、返済が完了してはじめて購入した人物の所有になる。しかし銀行のマイカーローンでは自動車は担保として扱われず、購入したらすぐに所有権が手に入るのだ。
「必要書類をすべて揃えて銀行に行き、車の購入もローンを申請する。不動産を購入した信用があるため銀行はローンを組んでくれる。銀行は所有権をつけないから、新車が納車されたその日にそのまま、金融屋に転売できる」(X氏)
この時点で、詐欺師たちの手元にはオーバーローンで借りた金、消費者金融で借りた金、車を転売した金が入っている。さらに、彼らは住宅ローン付きの物件を人に売るという。
「半年ぐらい返済したら、住宅ローン付きの物件はブラックリストの人間に売ってしまうんだ。抵当権つきで100万円とか、安い値段でいい」(X氏)
ローンの返済がストップした場合、普通であれば銀行が物件を差し押さえて競売になる。しかし詐欺師らは先回りしてローン付きの物件さえ現金に変えてしまうのだ。
ブラックリストに載ってローンが組めない人間に家を売るメリット
これは、買う側の人間にとってもメリットがあるという。
返済遅滞や自己破産などでブラックリストに載った人間や反社会的勢力の人間は、家を買おうと思ってもローンを組むことができない。しかしローン付きの物件を詐欺師から買えば家を持てるのだ。
「ブラックリストの人間に家を売ったら、成りすましが作った通帳とキャッシュカードと印鑑も同時に渡す。その通帳で毎月銀行にローンの返済分を払っていれば、その家に住んでいられる。銀行は住んでいる人が誰でも、ローンさえ払ってくれればいいからだ」
そうして詐欺師グループからローン付きの不動産を買い、今でも住んでいる人が複数いるという。さらに「ローンを支払って住んでいる人間にとっては、20年経てば名義は自分の物になる」(X氏)という。
これは民法の「取得時効」という仕組みである。ある物件が他人のものだと最初から知っていても、20年間住み続ければ自分のものにできる。