終盤の名演技が生まれた理由
家族と過ごした時間と思い出が、終盤で彼女が見せる名演技へと昇華する。声を出さず、鼻もすすらず、無表情のまま、流れる涙を手のひらで拭い取って髪になすりつける。
「あのシーンは、監督がホワイトボードに書いたセリフを、刑事役の池脇千鶴さんにだけ見せて、そのセリフに私が返すという撮り方でした。本当は泣きたくなかったんですけど、彼女が抱える“母性をどう受け入れるか”という葛藤を思いっきり突かれて、動揺してあんなふうになってしまいました」
安藤は初めての是枝組を振り返り、“映画の現場”以外に形容する言葉がないと言う。
「この作品に出演している義理の父(柄本明)も、『いやー、久しぶりに“映画の現場”に行ったなー』と嬉しそうに話していました。私にとっても、とても心地のよい時間でした。出産後の現場復帰作が、この作品で本当によかったです」
あんどうさくら/1986年、東京都生まれ。2007年、俳優デビュー。16年、主演映画『百円の恋』で第39回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など数々の賞を受賞。18年度後期のNHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』でヒロイン・安藤福子を演じる。
INFORMATION
『万引き家族』
原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林他
6月8日(金)より、TOHOシネマズ日比谷他にて公開
http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/