「それにコアなファンも、以前のように海外まで遠征したり国内の試合をハシゴする人はずいぶん減りました。物価高ですしチケット代も高騰しているので、まずアイスショーはカットして、みたいな人も多いはずです」
どうしてライトな層はいなくなったのだろうか。
「それはもう、人気スケーターの引退が最大の原因ですね。フィギュアがここまで人気競技になったのは、浅田真央さんが登場し、荒川静香さんがトリノ五輪で金メダル、男子では高橋大輔さんという個人の人気がきっかけでした。そこに羽生結弦さんが現れたことで一気に一般層に浸透しました。
パトリック・チャンやハビエル・フェルナンデスといった海外のライバル選手と争ってオリンピックで2大会連続チャンピオンになったんですから」
競技の成績という点では、近年の日本の選手も頑張っている。女子は坂本花織選手が世界選手権で3連覇しているし、男子では鍵山優真選手が北京五輪で銀メダルを取っている。
「男子も含めて選手はみんな頑張っています。ただ、やはり個性が……」
女子ではむしろ今のほうが総合的には成績が上がっていると言ってもおかしくない。しかしそれではなぜ人気につながらないのか。
「今の日本が強いのはたしかです。成績面で言えば、特に女子は日本のフィギュアスケート史上最強と言っていいでしょう。坂本選手はもちろんのこと、グランプリシリーズの成績上位6名のうち日本勢が5名を占めたのは快挙です。男子も含めて、選手はみんな頑張っています。ただ、やはり個性が……」
フィギュア取材歴が長い別の記者氏も、「選手の個性」に物足りなさがあるという。
「羽生さんが人気だったのは、オリンピックでの金メダルはもちろん、突出したキャラクター性があったからです。ともかく負けず嫌いで、ライバルに闘志を燃やしてギラギラしていて、でもどこか愛嬌もあって。
浅田真央さんもそうで、幼い感じの半面トリプルアクセルに頑固なまでにこだわる負けず嫌いな面が個性になっていました。彼らと比べると、今の選手は『いい子』過ぎるかもしれません」