そしてこう続けた。
「羽生さんと真央さんは人生そのものが漫画やドラマのような、起伏のあるストーリーがありました。その点で、今活躍している選手にはそこまでの何かがない。プロになった羽生さんや真央さんのアイスショーはチケットが争奪戦になっていて、現役の大会は完売しないというのが全てを物語っています。羽生さんにとってのネイサン・チェンや真央さんにとってのキム・ヨナのようなライバルが今は不在なのも大きいです」
ライバルという点では、来シーズン少し動きがありそうだ。
「実は女子は、来シーズンからロシア選手の復帰が認められました。オリンピックに出られるのは1名になりそうですが、女子でも4回転ジャンプやトリプルアクセルをこなせる選手が出てくる可能性が高く、坂本選手をはじめとする日本勢にとっては強敵。それを打ち破って来年のミラノ五輪で金メダルをとれば、一気に注目が集まると思います」
「もう1人、ストーリー性という点で期待している選手がいます。女子の…」
そしてフィギュア業界では、坂本花織と同等かそれ以上の人気のポテンシャルを見込まれている選手がいるという。
「もう1人、ストーリー性という点でひそかに期待している選手がいます。女子の紀平梨花選手です。2018年の平昌五輪のときは15歳で年齢制限に引っかかって出られませんでしたが、全日本選手権では3本のトリプルアクセルを成功させて3位に。その後4回転ジャンプも成功させてロシア勢を倒す可能性を持った唯一の選手と期待を集めました。でも2022年の北京五輪は怪我の影響で出られず、現在まで大会は全休です。ここから再起してオリンピックで金メダルなんていうことになれば、日本中にブームを起こすのは間違いないと思うのですが」
紀平選手はオリンピックを年齢制限と怪我で2度も逃し、その後の怪我との長い闘いも胸に迫る。とはいえ、2シーズン全休している選手に希望を託すところに、フィギュア界の苦境が現れているのかもしれない。