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「一昔前は半グレでも今よりずっと律儀だった」

「ヤクザの世界では強盗や窃盗、詐欺などに手を染めることは恥と考えられてきた。それが反社会的勢力としての排除が強まり、食えなくなった者がオレオレ詐欺に手を出すようになった。しかし近年は詐欺の実行犯が逮捕されるだけでなく、組織のトップが“使用者責任”を問われ、裁判所から数千万円の賠償金支払い命令が出るようになったことで、どこの組織も『詐欺はやるな』と言っている。親分にダメと言われたことをやる奴はいないから、今オレオレ詐欺をやっている人間はヤクザではない。闇バイトもそうだ」

 この幹部によると、かつてはヤクザに加入していなくても、組織の縄張りの近くで活動する半グレの若者や組織のことはおおよそ把握していたという。しかし、現在は闇バイト強盗の首謀者の情報は全く入ってこない。

写真はイメージ ©AFLO

「一昔前は半グレでも今よりずっと律儀だった。地元の半グレから面会の申し出があり、『仕事を始めたいので出資してほしい』というからカネを出してやったことがある。縄張り内でオレオレ詐欺のアジトでも借りる資金だったんだろうが、『何に使うんだ』と聞いてしまうと、後でその連中が警察に摘発された時に、芋づる式に自分も共犯になってしまう可能性がある。だから何も聞かずにカネを渡したんだ。その後は定期的に(上納金として)カネを持ってきて、ある程度は半グレの連中の動きも把握できていた。それが最近は一向に分からなくなった」

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 SNS空間の安全地帯で若者たちを操って闇バイトを企むトクリュウの本丸の特定に警察は苦戦しているが、闇社会の住人である暴力団にとってもその動向をつかむことは簡単ではないようだ。