昨年8月以降、首都圏を中心に発生した“闇バイト強盗事件”によって国民の体感治安は極度に悪化した。
一時期は鎮静化したように見えたが、年が押し迫った12月22日にも千葉県内で2件の強盗事件が発生し、年が明けた1月1日にも愛知県春日井市で2人組による強盗、2日には茨城県鉾田市で4人組による強盗未遂事件が相次いで起きている。めでたい正月に、闇バイトに襲われてはたまらない。
“トクリュウ”と呼ばれる「匿名・流動型犯罪グループ」の「闇バイト強盗」に神経をとがらせているのは一般市民だけではなく、なんとヤクザも一緒だという。
「ヤクザになって上下関係でピリピリするよりも、楽にカネを得ようと…」
東京に活動拠点を置く指定暴力団幹部は、「なり手不足」の暴力団社会の近況についてこう打ち明ける。
「かつて不良の若者たちは、ヤクザに憧れて組織に入門するのがお定まりのルートだった。しかし最近は入門せずに半グレのような組織に入ってオレオレ詐欺をするやつが増え、さらに今はSNSで闇バイトを募って強盗を企むようになったのだろう」
“不良の若者”たちがヤクザではなく半グレや闇バイトのような形を選ぶのには、ヤクザ業界特有の事情があるという。
「最近の若者は暴力団に入りたがらない。入門した若い衆には、『部屋住み』という修行が待っている。親分の自宅兼事務所に住み込んで、掃除や洗濯、料理、親分が外出するときは運転手兼ボディーガードもするという身辺の世話役だ。そういうヤクザの社会特有のしきたりや厳しい上下関係が、若者から敬遠されている。一般社会と同じで我々の社会も少子高齢化で、なり手不足状態が続いている」
当のヤクザたちも、厳しい慣習が若者から避けられていることはよくわかっている。
「ヤクザになって上下関係でピリピリするよりも、気の合う仲間たちと一緒にいた方が楽しいに決まっている。10代後半の不良仲間の延長だ。そのまま年を重ねて20代、30代の半グレのような連中が闇バイトで一般の若者たちを募集して、楽にカネを得ようとしているのだろう。かといって、若者を集めるためにヤクザ側が伝統や慣習を変えることはない」