岩本容疑者への還流は約3700万円
元東京地検特捜部の検事だった落合洋司弁護士は、“裏金事件”についてこう解説する。
「不正資金を現金化する犯罪の場合、金額や受け渡し時期の正確な記録を付けている事が少なからずあります。意外かもしれませんが、犯罪者同士の揉め事を避けるために記録が必要なのです。今回の事件で、現金化していても、こうした記録があれば、岩本容疑者に還流した、という証拠になり得ます」
公認不正検査士の米澤勝税理士は、事件の構図を次のように推察した。
「約1億1700万円の報酬のうち、岩本容疑者への還流は約3700万円という報道を前提にすると、不正を隠蔽するため、一級建築士が適正な納税ができるように配分を決めたと類推できます。
実効税率55%で計算すると、所得税と住民税が約6400万円。残った5300万円を、岩本容疑者が3700万円、一級建築士が1600万円で山分けすると、取り分が概ね2対1となります」
捜査関係者によると、岩本容疑者の自宅などを捜査した結果、数億円分の現金や金塊が発見されたという。さらに、岩本容疑者が所有する土地やアパート、マンションは、東京都内だけでなく、関東一円から大阪、そして故郷である佐賀県唐津市等、全国各地に分散していることが私たちの取材で分かっている。
莫大な不正資金は、こうした不動産に使われた可能性もある。岩本容疑者が愛用するクルマはベンツ、洋服は高級ブランドのレオナールを選ぶことが多いが、「カレーハウスCoCo壱番屋」のカレーが好物という庶民的な一面をもつ。
そして――。
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現在配信中の「週刊文春 電子版」では、問題発覚の当初から本件を取材してきたジャーナリスト・岩澤倫彦氏の記事を掲載している。元経理課長が見抜いた“不正の痕跡”、岩本と深い関係にある大物政治家の実名、現役の医師が「まだ女子医大を信用できない」と語る理由など、岩本の逮捕に至るまでの経緯を全3回にわたり詳報している。
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