たた 僕、引っ込み思案で、人と話すことが苦手で。その人に限らず、シフトが被っても誰とも話さず、ただ皿を洗っているだけの…ちょっと暗い子でした。
当時身長155センチで小さかったんですが、体重が80キロぐらいあったんです。それで「そんなに自分ってありえないのか」と思って、ダイエットを決意しました。
──ショックな出来事だと思いますが、よくポジティブに転換できましたね。
たた ポジティブというより、自分がその人に嫌な気持ちを与えているなら、自分を変えなきゃなって。僕ってもしかして「ここにいたら迷惑な存在なのかも」って、思ったんです。
それで、変わらなきゃ、でもどうしようという時に思い出したのが、バイト先のイケメンの先輩。その人はゲップしてもカッコイイんです(笑)。
──何をやっても格好いい人っていますよね。
たた あの先輩みたいになりたいって思ったときに「自分とは体型も顔も違うから、まずそこからじゃね?」と。当時、倖田來未さんの「午後6時以降は食べないダイエット」が流行ってたので、それを真似して、3か月ぐらいで60キロぐらいまで痩せたんです。
──すごいですね! でも、その後、就活中にもう一度太ってしまったとか。
たた そうなんです。大手に内定が決まっていたんですけど、内定者研修でその会社の外見に関する規則を聞いたんです。前髪は眉毛より上、もみあげは耳にかからないように、金髪はもちろんダメ。メイクもしちゃいけなくて。
「自分は結婚もできないし、子供もできない」ゲイであることの葛藤
──今はだいぶ変わってきましたが、2010年代当時はまだ厳しかったかもしれません。
たた そうですね。僕はゲイなので、世間一般の幸せな将来像が描けなかったんです。良い高校に入って、良い大学に入って、良い会社に入って、結婚して子供を作って…みたいな。自分も途中まではまさにそういうレールに乗っていて、進学校に入って一生懸命勉強したし、大学でも成績2番とかで、大手に就職が決まって…。
それまでは漠然と大きなものにすがって、レールの敷かれた人生をすすんでいればよかったけど、その先の未来を考えたときに、はっとしたんです。自分は結婚もできないし、子供もできない。だから自分の中で大切にしてきたのが、好きな髪型やファッションで生きることだったんです。
それなのに、その会社に入ったら、好きな髪型も好きなメイクもできない。本当に幸せなのかなって。それで内定辞退することにしたいんです。
──そうだったんですね。
たた 学生時代、寿司屋と掛け持ちで、コンビニでもバイトしていたんですけど、そこが自分の居場所だったです。コンビニって忙しいから、とにかくシフトをこなすだけで必要とされる。初めて「ここにいていいんだ」と思えたのがコンビニだったんです。だから、コンビニのオーナーになりたいという夢も持っていたんです。
ただ、当時のフランチャイズ契約は、夫婦じゃないと結べなかった。なので、その時初めて母にカミングアウトして、一緒にオーナーになってもらったんです。
──そこから2年間で120キロまで太ったそうですが、何があったんですか?