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異界を巡る体験を経たあとに

 これで会場をひと回りしたことになる。暗がりから抜ける出口は入口のすぐ横に設けられていて、展示の初っ端で目にしたガラス窓一面の草花や蝶の写真作品《Liminal Pathway》と、再び邂逅するかたちとなる。異界を巡る体験を経たあとに観ると、先ほどよりずっと鮮やかなものに感じられた。作品自体はまったく変わっていないはずなので、こちらのものの見方にこの短時間で何らかの変化が生じたのかもしれない。

「異界巡り」の終着点から見える《Liminal Pathway》

 今展が、境界線の上を歩きながら異界を覗き込むような構成になったのは、開催地である京都という土地に触発されてのことだった。蜷川実花の目から見れば、特異で長い歴史を持つ京都には、異界につながる穴がそこかしこにポッカリ開いているという。生と死、彼岸と此岸、光と影といった両極のものが同居する土地で展示をするなら、それらを強く意識させるものにしたいと考え、展名にもある「彼岸の光、此岸の影」というテーマが定まっていった。

一面に彼岸花が咲き誇る《Flowers of the Beyond》

チーム制作で「異界」を出現させた

 表現したいものが壮大だったこともあり、今展は「蜷川実花展 with EiM」とうたっている通り、蜷川個人ではなくクリエイティブチームEiM(エイム)によって制作されることとなった。EiMは蜷川をはじめ、データサイエンティスト宮田裕章、セットデザイナーENZO、クリエイティブディレクター桑名功、照明監督の上野甲子朗ら、各分野のスペシャリストで構成されている。銘々のプロフェッショナルな技能や知見が合わさることによって、来場者を没入させる果てしなき異界は生み出されたのだった。

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 死という終わりがあるからこそ生は輝くのだし、光が強いほど影はいっそう濃く豊かなものとなる。両極のどちらにもじっくり目を凝らし、世界を丸ごと味わい尽くしてみてほしい。蜷川実花とEiMからのそんなメッセージが読み取れるような展覧会だ。

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「蜷川実花展 with EiM:彼岸の光、此岸の影」
京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
1月11日~3月30日
https://ninagawa-eim2025kyoto.jp/