「真面目な子だったのに、渋谷の女と知り合ってから…」

「娘は純粋無垢な子でした。本当に真面目な子だったのですが、短大を卒業後、就職活動をしていた23歳の時に、渋谷の女と知り合い、家に出入りするようになったと聞いています。それ以降、娘とは長らく音信不通になりました。

 唯一、娘から連絡があったのは3年ほど前のことです。突然電話がかかってきて、『家系図はどう作るの?』と聞いてきました。それまで何の連絡も寄越さなかったのに、いきなりそんな連絡をしてきたもんだから、私は『自分で調べなさい。お前は道を踏み外しているぞ』と突き放してしまった。それ以降、今までA子から連絡がきたことは一度もないです」

外壁周りのポールには洗濯物がいっぱいだったという ©文藝春秋

 数十年ぶりに聞いた娘の声。それからほどなくして、渋谷の逮捕を報道で知ることになる。A子さんの父は語気を強めた。

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「娘は20代の一番楽しい青春時代を無駄にしたのです。本当だったら、結婚して子供ができて、ごく普通の家庭を築いていたでしょう。彼女の人生の全てを渋谷に奪われた。そう思うと、本当にやり切れません」(同前)

父親が記者に託した“伝言”

 85歳を迎え、今は終活の準備も進めているというA子さんの父は、涙を拭きながら、渋谷への怒りをあらわにする。一方で、「娘に会いたい」という気持ちもあふれていた。

「もう老い先短いですから、この戸建ても売りに出しているところです。でも、本音では彼女の生活の少しの足しになればという思いもあり、娘にこの家を譲りたいのです。渋谷が亡くなった今、その呪縛から解き放たれてほしい。そして、もう一度、娘に会いたい」

 渋谷の死後から数日が経った今も、娘からの連絡はないという。取材に応じてくれた礼を伝えると、A子さんの父は小誌記者を呼び止めて、ある伝言を残した。

「取材をする中で、もし娘に会ったら『親に会いなさい』と伝えてください」

文春リークス

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