帝都に近い陸上自衛隊習志野演習場では年明け早々、日本唯一の空挺旅団である、第1空挺団主催による「空挺降下訓練始め」と訓練展示が一般市民も招いて公開された。部隊の規模と装備の詳細は明らかにできんが、東の空挺団、西の水陸機動団と並び称される日本を代表する精鋭部隊の名を欲しいままにしている空挺団である。習志野にはいまだ我々のカメラの前にその実情を現したことがない特殊部隊その名も「特殊作戦群」も控える。

©宮嶋茂樹

最前線にも派遣されている空挺団

 その空挺団のモットーは「精鋭無比」、テーマソング(愛唱歌)は「空の神兵」であり、まさにその歌詞のとおり敵の支配下でも山河であろうと夜間であろうと恐れることなく空から舞い降り、戦闘をつづける能力があるばかりか2011年に発生した東日本大震災直後の東電福島第1原発20~30km圏内の行方不明者捜索始め災害派遣やアフリカ、ジブチの自衛隊海外拠点という最前線にも派遣されている。その団員たるやまさに根性、気合い丸出しの猛者揃い、みな落下傘を表す空挺記章(エンブレム)を胸に誇り高いが、数は少ないながら女性空挺団員もいる。

©宮嶋茂樹

 そして今年の訓練降下始めには同盟国である米軍に加え英蘭加独豪仏伊、ウクライナ隣国の遠くポーランドや同じアジアのフィリピン、シンガポールからも11か国の約200名の外国軍空挺隊員も参加、実際日米軍の落下傘を背負い、航空自衛隊のC-130輸送機や陸上自衛隊のCH-47大型ヘリコプター、さらに米空軍のC-130輸送機からジャンプして習志野上空で散開した。自衛隊側は舞台をあえて特定の国や地域は想定しないとお決まりでいうが、不肖・宮嶋からしたら、そりゃあ日本の沖縄県南西諸島の離島を想定、敵は中国人民解放軍やそれと手を組むロシアや北朝鮮やろ。

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実戦的な近接戦闘訓練も公開

 またこの訓練では訓練のための訓練を繰り返してるわけやなく、昨今のウクライナでの戦闘も参考にドローンによる偵察部隊や少数の対人狙撃チームによる降下やナイフを使用した近接戦闘訓練も公開された。さらにドアガンを射撃しながら敵陣に接近するUH-1ヘリ、その後10式戦車や16式機動戦闘車を先頭に敵が潜む離島に進攻する空挺団員らのスムーズで無駄のない動き、これが訓練で良かったと思えるほど実戦的であった。しかし圧巻はやはり12か国の空挺降下による曇り空とはいえそれを覆い隠す無数の落下傘が開花した瞬間であり、6機の陸上自衛隊CH-47ヘリから降下した12か国の空挺隊員が各々の国旗を掲げ一斉に中谷元防衛相も臨席したVIP席もある丘に向かい突撃していくシーンであろう。それは硫黄島の摺鉢山や203高地攻略もかくやのシーンであった。

©宮嶋茂樹

 この12か国の連帯、練度の高さを我が国周辺の想定敵国に見せつけられたことは「日本に手を出したら、同盟国米軍は元より、NATO主要国や中国の鼻薬が利かぬアジアの国々まで黙ってへんで」という強いメッセージを発することができたはずである。