新たにさらけだした「自己承認欲求」が連載中から話題に!

 2025年1月25日、村山由佳さんにとって6年2か月ぶりになるサイン会が、丸善丸の内本店で開催された。開始前から長い列を作ったファンひとりひとりが大切そうに抱える最新刊は、どうしても、直木賞が欲しい――作家が選んだ文学賞という栄誉を獰猛に追い求める作家・天羽カインを主人公に、編集者、出版社、書店など余すことなく業界を描き切った『PRIZE―プライズ―』(文藝春秋)だ。直木賞の発表媒体である小説誌「オール讀物」での連載中から、「ここまで書いてしまっていいのか!?」と話題を呼んでいた。

着物姿でサイン会に臨んだ村山由佳さん。帯の文様は「本」があしらわれている

 1993年『天使の卵 エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビューした村山さんは、青春小説の旗手として多くの読者を獲得した後、2003年『星々の舟』で直木賞、09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞・島清恋愛文学賞・柴田錬三郎賞、21年『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞という数々の栄誉を手にしてきた。大胆すぎる性愛を描いて読者を驚かせ、歴史を題材にした作品でも高い評価を得た村山さんが、今回、新たにさらけだしたのは、ずっと裡に秘めてきた「自己承認欲求」だという。

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「文学賞を欲しがる作家を主人公にしたのは、まぎれもなくかつての自分自身に覚えのある感情だったからです。『オール讀物』の連載だったこともあって、思い切って『直木賞が欲しい』と第1回で書くことにしたのですけど、賞にかぎらず作家として認められたい、評価されたい思いって、本当に長年、取っ組み合ってきた自分の中の欲求だったんです。今回それを全部注ぎ込めたかなと思っています」(文春オンラインより