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分かりにくい画像診断の所見

 読者のみなさんは、健康診断の結果表に記載されている「胸部レントゲン」や「心電図」など画像診断の所見を気にしたことはあるでしょうか。

「胸膜肥厚」や「T波低下」などの難しい専門用語が書いてあり、「どうすればよいかわからない」と戸惑われた方も多いと思います。ただ、画像診断からも重篤な病気のリスクがわかるので、決して無視すべきではありません。

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医師が解釈を間違いやすいパターンがある (写真はイメージ)©masamasa3/イメージマート

 そこで、今回は画像診断の解釈の仕方から、意外な裏事情までを、わかりやすく解説していきます。

画像診断は「芸術作品」の解釈に似ている

 本題に入る前に、まずは前提として知っておいてほしい事実があります。

 レントゲンやCT、MRIなどの画像から体の状態を読み解く技術は、 科学的な根拠に基づいた高度な医療技術であると同時に、実は医師の経験と洞察力に大きく左右される側面も持ち合わせている、ということです。ある意味では“芸術作品”の解釈にも似ていると、私は思っています。

伊藤大介医師

 特にレントゲン画像の診断は、 まるで展覧会の絵を読み解くようなものです。

 例えば、一枚の抽象画を想像してみてください。背景の一部に、細かくてよくわからない「何か」が描かれているとします。よく見ると、遊んでいる子供のようでもあるし、動物のようでもある。「何に見えるか」は見る人の主観や知見に左右されます。「子供」と答える人もいれば、「動物」と答える人もいるでしょう。

 レントゲンの画像も同じです。

 ある医師は、レントゲン画像に写る肺や乳房の影の形や大きさ、濃淡を見て「これは、がんだ」と判断するかもしれません。注意深い医師であれば、そこからがんの種類や進行度までをも高い精度で推測できることもあります。一方で別の医師は、同じ影を見て「炎症だろう」と判断するかもしれない。絵画を見る人によって解釈が異なるように、その医師が備えている経験や技能、洞察力によって診断結果が変わってくることがあるのです。