健康診断の結果という“数字の羅列”を、身体を読み解くコンパスに変える――。総合診療医・伊藤大介氏が、健康診断を活用した「糖尿病リスク」の確認について解説します。
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糖尿病は「血糖値」だけでは不十分
「血液検査」と「尿検査」の検査結果から分かる代表的な疾患に糖尿病があります。
糖尿病を気にする人の多くが血液検査の「血糖値」をチェックすると思います。
日本人の10人に1人が糖尿病を発症していると言われ、放っておけば末梢神経がピリピリと痛み出し、目の血管も糖に侵され網膜症も進む。最悪の場合は脳卒中や心筋梗塞の発症、あるいは失明に陥り、足が腐って切断を余儀なくされることもあります。
ただ、糖尿病の発症リスクを正確に知るためには血糖値だけでは不十分。多くの人が見落としがちなのが、尿検査で結果が出る「尿糖」の項目です。さらに、「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」の数値も非常に重要です。本来、糖尿病の発症リスクを把握するためには、この「血糖値」「尿糖」「HbA1c」という3つの基本セットを抑えておくべきなのです。
改めてそれぞれの特徴を見ていきましょう。
(1)血糖値
血液中の糖分の濃度を示すので、指標として直接的でわかりやすい。しかし、一番の問題は、あくまでも“瞬間風速”の数値に過ぎないということです。
血糖値は普段の生活で頻繁に変動しています。空腹の時は血糖値が下がって、甘いものが食べたくなります。逆に甘いものをいっぱい食べると血糖値は急激に上がります。一方、軽く運動するだけでも血糖値が下がる。食事や運動の影響を受けやすいのです。