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 つまり血糖値は、採血をした時の状況によって大きく変動してしまう。そこで、血糖値には「空腹時血糖値」と、食事をとった後に時間を定めずに測定する「随時血糖値」という2つの指標を設けています。

 患者さんが「空腹時血糖値が126mg/dl以上」「随時血糖値が200mg/dl以上」のいずれかに該当する場合、医師は糖尿病をかなり強く疑います。しかし、繰り返しになりますが、いずれも「その瞬間」の血中の糖分濃度を見ているだけ。日頃の生活で、いつも血糖値が高いかどうかはわかりません。

血糖値は“瞬間風速”の数値に過ぎない(写真はイメージ) ©show999/イメージマート

(2)尿糖

「尿糖」とは尿中に糖分があるかどうかを示す項目です。尿検査を受けることで分かります。特殊な試験紙を採尿した尿につけて、色の変化で判定するのです。そもそも糖尿病は、かつては「蜜尿病」とも言われ、尿が蜜のように甘くなることに特徴がある疾患だと考えられていました。

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 先ほどの血糖値は「その瞬間」の血液中の糖分濃度を測定しており、いわば「点」のような視点で糖尿病のリスクを見ているのに対して、尿糖は膀胱内で蓄積されて排尿されたものを調べるので、その蓄積されている間の糖分を反映しています。ある意味では「面」のような視点で糖尿病のリスクを見ることができるのです。

 ただ、尿糖にも問題点があります。尿糖はマイナス(陰性)かプラス(陽性)かという指標で結果を出すのですが、「なかなか陽性にならない」という問題があるのです。しかも厄介なことに一度でも尿糖の結果が「陽性」となってしまった場合は、すでに体内では深刻な事態が起きています。医師は「かなり糖尿病が進行している」と考えるでしょう。

(1+)という結果が出れば、絶対に病院に行かなければいけない状態ですし、尿から糖分を出す特殊な薬を飲んでいなければ(4+)などという数値では、緊急の処置を必要とします。

 考えてみれば当然のことで、糖分はもともと人間が生きるうえで欠かせない栄養素です。そのため腎臓にもブドウ糖を再吸収する仕組みがあるのですが、それにも関わらず、尿中に糖分が漏れ出てしまうということは、よほど体内に糖分が余っている。血糖値も非常に高い状態にあると推測されるわけです。

 尿糖は、血糖値に比べると、より長いスパンで糖分を測ることはできるものの、結局のところ詳細な数値を把握できない。そのため「陽性」になった時にはすでに遅く、予防に活かすことが難しいのです。

本記事の全文は『文藝春秋 電子版』に掲載されています(伊藤大介「健康診断は宝の地図だ 第5回」)。

 

全文では、血糖値や尿糖と比べても信頼性の高い「HbA1c」という重要なキーワードについても、伊藤医師が解説しています。

 

■「文藝春秋 電子版」で一気に読める「連載:健康診断は宝の地図だ

第1回 健康診断は宝の地図だ 「進行レベル」と「進行速度」を意識せよ

第2回 健診結果の見方は〈年代別〉で全く違う!

第3回 酒好き必読! 肝臓、腎臓のダメージが分かる「検査項目の意外な組み合わせ」 

第4回 血圧、動脈硬化のリスクが分かる〈検査数値〉の組み合わせ

第5回 血糖値では不十分! 糖尿病リスクが分かる〈検査数値〉の組み合わせ術

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