医師が解釈を間違いやすいパターンは?
なかでも、医師が画像診断を間違えやすいパターンがあります。
その一つは医師の専門分野によってズレが生じるケースです。「胸部レントゲン」の同じ画像を見ても、呼吸器の専門医であれば、当然、肺に注目しますし、循環器の専門医であれば心臓に注目します。一枚の画像もそれだけ注目すべき箇所が多く、導き出される診断結果にも幅が出てしまうのです。
このことは同じ絵画を見ても、画家であれば作者の技法に注目し、美術史家であれば、その絵画が描かれた時代背景に注目するといったように専門分野によって注目ポイントが異なることと似ています。
もう一つは、患者さんの体質や病歴を考慮できないケースです。
例えば、長年にわたり喫煙習慣のある患者さんの肺のレントゲン画像に影が見つかった場合、医師は、喫煙歴のまったくない患者さんと比べて、当然、肺がんの可能性が高いと考えるでしょう。
その患者さんの過去のレントゲン画像と比較することで、 変化の有無をより正確に判断することができるのですが、時々しか利用しない病院で診察を受けたり、そもそも受診歴がない病院だったりすると、過去の画像を参照できないことになります。そのようなケースが意外に多いのです。
本来、医師であれば、患者さんの過去のレントゲン画像と比較することの重要性は、研修期間中に繰り返し教え込まれているはずです。私も研修医時代、指導医から「過去の画像を見ずに診断するなんて、楽譜を見ずに演奏するようなものだ」と厳しく叱責されたことを今でも鮮明に覚えています。
※本記事の全文は、文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(伊藤大介「健康診断は宝の地図だ 第7回」)。
全文では、医師の診断基準の「厳しさ」と「緩さ」、画像診断を間違われないために患者にできること、画像診断で「C」や「D」が出た時の対処法、胸部レントゲンで注意すべき所見などについても、伊藤医師が解説しています。
■連載「健康診断は宝の地図だ」
・第1回 健康診断は宝の地図だ 「進行レベル」と「進行速度」を意識せよ
・第2回 健診結果の見方は〈年代別〉で全く違う!
・第3回 肝臓、腎臓のダメージが分かる「検査項目の組み合わせ」
・第4回 血圧、動脈硬化のリスクが分かる「検査数値の組み合わせ」
・第5回 糖尿病リスクが分かる「検査数値の組み合わせ」
・第6回 頭が重い、肌荒れ…体調不良の原因が分かる検診結果の見方
・第7回 胸部レントゲン・心電図の「C・D判定」は即病院に向かえ!
・【動画】総合診療医が実況解説! 健康診断の活用術
