ギャンブル症の予防として、おためごかしに設置されているのが、週3回、月10回の入場制限です。そうはいっても、連続3日間72時間はギャンブル場に入り浸り可能です。これでギャンブル脳ができ上がる可能性は、大いにあります。

 大問題なのは、射幸性の制限もなく、賭け金の上限額もないことで、事業者を大いに喜ばす内容になっています。

 次にIR全体に占めるカジノの面積ですが、3パーセント以下と定められているのみで、広さの上限はありません。IRが広ければ、カジノの敷地も広くなります。

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カジノがもたらすメリットは本物か?

 こうした後ろめたい内容を隠すためか、政府はカジノ解禁の理由として3つの利点を公言しました。経済効果と雇用創出、そしてギャンブル等依存症対策費の捻出です。この雇用創出の見通しとして、ディーラーが二千人、他を含めて5000人の雇用ができると計算しています。これらが本当に実現するのか、他国の例を見てみると実状が判明します。

 トランプ氏がかつて逃げるようにしてカジノ・ホテルを畳んだ、米国東海岸ニュージャージー州のアトランティック・シティの例を取り上げます。

 年間3000万人を見込んでいた客は、実際はその6分の1の500万人でした。反対に増加したのは、犯罪率、児童虐待、青少年の逮捕、ホームレス、自己破産、乳幼児死亡率、10代の妊娠とエイズだったのです。

 このホームレスに関しては、日本も他人事ではありません。貧困者を支援して自立に導く運動をしているビッグイシューが、2019年頃にホームレスの調査をしたことがあります。するとその4割がギャンブル症によるホームレスへの転落だったのです。

 軒並み悪いことのみが急増した中で、唯一減少したものがありました。それはカジノ周辺からの商店の撤退で、商店街もシャッターが下りた所ばかりになったのです。こうした景気の停滞の中で、増えたのは市の出費でした。道路の整備や上水道の設置、治安維持のための費用、消防の充実のための出費などがそうです。

次の記事に続く 人口6万人→1万2000人まで減少、街の治安が悪化しただけじゃない…カジノ誘致に“甘い夢を見た”「韓国とシンガポール」の大失敗

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