カジノ解禁は、日本の歴史が始まって以来の大きな政策変更でした。つまり国家の理念の変更なのです。というのも先に述べたように、カジノは民間に丸投げした賭博であり、歴史上長く保持してきた政策をひっくり返すものなのです。にもかかわらず、たったの2週間の議論だけでの転換で、有識者会議さえも作られなかったのです。これこそ「今だけ」主義の発露です。

日蓮上人も泣いている

 IR実施法が国会に提出されたのは、それから1年半後の2018年4月27日です。さすがに建国以来初めてのカジノ解禁ですから反対意見も続出して、なかなか決着がつきませんでした。再び廃案になるのを恐れた自民党と公明党そして日本維新の会によって、7月20日に強行採択されました。

 このとき賛成した公明党に対して、私自身は、日蓮上人も泣いているだろうなと思ったものです。ギャンブルなど、日蓮上人にとっては罪であり謗法(ぼうほう)のはずだからです。

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 翌2019年4月にはIR施行令が発布され、2020年1月7日にはカジノ管理委員会が設置されました。事務局は95人体制であり、年間25億円の予算が組まれたのです。安倍首相のトランプ氏訪問から4年も経たない早業でした。あと先を考えない「今だけ」、収益だけを目指す「金だけ」、そして自分たちだけが得をすればよいという「自分だけ」の見本だったのです。国民は全く蚊帳の外に置かれたままでした。

 あれよあれよという間の、手品じみた動きだったので、この施行令の内容も周知されないままでした。いかに不合理な中味なのか確かめましょう。

 まず24時間の365日営業です。つまりカジノは休みません。いつでも開いています。次に事業者は、客に資金の貸しつけができる特定資金貸付業務が認められています。つまりパチンコ・パチスロ店にATM機が設置されているのと同じで、客はツケでいくらでも現金が引き出せます。